秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
どうして私に勉強を教えてほしいって言ったの? 特別な意味なんてないはずだよね。
分かっているけれど、彼の傍にいられることが嬉しい。それ以上は望まないし、身の程をわきまえているつもり。
受験が終わるまで……。それまでは、こうして同じ時間を過ごせる。
彼の姿が完全に見えなくなったあと、本当の自分の家に向かう足取りが軽くて、あまり得意ではないスキップをしてしまうほど浮かれている。
自然と顔が緩んで、ふふっと声が漏れた。
私は、彼に恋をしたのかもしれない。初めての恋。
誰にも言わない、秘密の恋。自分だけの秘密を手に入れて、喜んでいる。
この気持ちを大事にしたい。どうにかしたいわけでなく、ただ心の中で大切にしておきたいのだ。
それだけで十分だった、十代の私。
結局卒業まで続いた、放課後の勉強会。
最後のほうは彼の友人たちも交じってすることになり、秘密の時間ではなくなっていたけれど、一緒に過ごせることには変わりないので何も不満もなかった。
一緒にいるうちに彼の人柄を知ることができた。
明るく社交的で、どの友人に対しても同じ態度。我が我がと前にしゃしゃり出ることはなく、人の話をしっかりと聞く上で、気の利いた一言を話す。だからどっと周りが湧いて彼に注目が集まる。
同じ年の男子にしては落ち着いていて、冷静に物事を考えられる人だと知った。