秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「よし、準備しよう」

 樹里の頭を撫でたあと、布団から抜け出し、キッチンのほうへ向かった。

 昨夜洗っておいた食器の片づけをしながら、今日のお弁当の準備をしつつ、朝食の準備をする。あれこれ同時に作業しながら、ふと先程の続きを思い出す。

 樹里を妊娠しているとわかったとき、私はまだ彼と付き合っていた。

 彼――というのが、小野寺 直樹(おのでら なおき)という、日本有数の大企業である小野寺グループ創設者の玄孫にあたる人だ。

 代々続く小野寺グループは、食品事業、木材などを扱う素材事業、輸送機事業、電力・プラント事業、エネルギー・金属事業など総合商社として多岐に事業展開をしている。

 数えきれないほどのグループ会社を束ねる中心にいるのが、小野寺直樹の父で、そのあとを継ごうとしているのが彼なのだ。

 その点、私は普通の……いやどちらかというと普通以下の貧しい家庭。
母子家庭で育ち、学生時代は大学進学だってできないかもしれないというギリギリの生活を送っていた。
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