秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「うわぁ……どうしよう」
こんなところ、初めて来た。
うちの高校の人たちは、お金持ちの人ばかりだったから、こういうシーンに慣れているのだろう。
物怖じせず中に入って行く人たちを何人も見送って、私は入り口のすぐ側で立ち尽くしていた。
はぁ……帰りたい、かも。
ここにいる女子たちは着物のまま参加している人は少しで、ドレスに着替えている子が多い。着物だと動きにくいし、パーティなのでドレスの方が相応しい格好なのかもしれない。
あんな素敵なドレスなんて持っていないし、私にとって着物が一番高価な装いだ。
しかしこの場所に不釣り合いな私は、とても居心地が悪く、どうしていいか分からずに立ち尽くしたまま。
帰りたいと思うけれど、せっかく参加費を払ったのだから、ご飯くらいは食べて帰りたい。
お昼ご飯もあまり食べていなかったから、お腹の音が鳴るくらい空腹だ。
「あの……もしかして、椎名さん?」
「え?」