秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
そう言い聞かせて地下鉄の駅のほうに向かって歩いていると、私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がして振り返る。
「椎名さん!」
「お……小野寺くん!?」
小野寺くんが、息を切らして私のほうに向かって走ってくる。目を丸くして彼の姿を見ていると、目の前で足を止めた。
「はぁ……よかった、間に合った」
「どうしたの?」
呼吸を整えたあと、小野寺くんは私の顔を見つめて話し出した。
「あのさ……椎名さん。今度俺と一緒に食事に行ってくれないかな?」
「え……?」
「メールで誘っても、なかなかいい返事もらえなかったから……次に会えたら、ちゃんと誘おうと思っていたんだ」
小野寺くんと食事……?
それってどういうことなのだろう?
「どうして?」
「椎名さんと仲良くなりたいんだ」
仲良く……?
「そんなに不思議そうな顔をしないでよ。俺が椎名さんのことを気に入っていることは、分かっているでしょ?」
「へぇ……っ!?」
小野寺くんがそんなことを言い出すから、変な声が出てしまった。