秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「……ご心配おかけして申し訳ありません。大丈夫です、直樹さんに釣り合っていないことは重々承知していますし、うちとは家庭環境も全然違います。結婚なんて大それたことを考えてなんていません」
「友里さん……」
こんな母親でごめんなさい、と頭を下げる直樹のお母さん。彼の家には彼の家の事情があるのだろう。お母さんが悪いわけじゃない。
こうして優しく諭してくれただけありがたいと思わないといけない。
頭では理解できるけれど、心はボロボロで、今にも泣いてしまいそうだった。だけどそんなことできず……お母さんを安心させるため、一生懸命笑顔を作った。
自宅に戻ってから、力が抜けたように床に座り込む。彼のお母さんに言われたことを思い返して、思いっきり声を上げて泣いた。
結婚しようとも、したいとも言われていないけど、この先もずっと一緒にいたいと願っていた。
恋愛の先にあるのが、結婚。
そう思っていたのは、私だけではないはず。
それは彼も同じ気持ちだと思っていたし、伝わってきていた。
だけどこの先はない――。
それだけは確実で、どれだけ好きでいても、いつかは別れなければならない。
そう思うと、胸が痛くて、苦しくて、涙が止まらなかった。
いつかは……別れる。