秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「ごめんなさい、別れてください」
テーブルに頭がつきそうなほど、私は深く頭を下げた。
本当は好き。別れたくない。
本当なら妊娠したんだと打ち明けて、喜ばれたい。そして「結婚しよう」と言って欲しい。
だけど、そんなの無理だよね。直樹の人生をめちゃくちゃにできない。
だからせめて……直樹からもらったこの命と共に、私は一生懸命生きていく。
ずっと好きな気持ちは消えない。ずっと心に温めたまま、生きていきます。だから別れてください。
「そんな……。俺、何か嫌われるようなことした? 友里の嫌がるようなことしてしまったらなら直すから。お願いだから、そんなことを言わないで」
「ごめんなさい。直樹は悪くない。私が勝手に心変わりしてしまったの」
何度か引き留められたけど、頑として答えを変えない私にこれ以上言っても無理だと感じた直樹は、それ以上何も言わなくなった。
悲しい表情を浮かべる彼を見ていられなくて、私は先にカフェの席を立つ。
このまま一緒にいたら、この決意が揺らいでしまいそう。そう思った私は早々に立ち去る。
大好きな人と別れてしまいった喪失感。もう直樹と連絡を取り合うことはないし、電話越しに響く心地いい声も聞くことができない。
悲しくて寂しくてたまらない。別れたばかりなのに、もう会いたい。
零れ落ちる涙を何度も拭って、お腹に手を当てる。
――あなたがいるから、頑張る。
この先、どんなに寂しくても我慢できる。あなたがいるから、強くなれる。
赤ちゃんに語り掛けるようにお腹を撫でて、家に帰った。