秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「あの……?」
「指輪。してないんだ?」

 左薬指に触れられて、ハッとする。

「あ、えっと……そう、ですね。あの……」
「旦那に指輪してって言われない? 俺だったら奥さんに四六時中つけておいて欲しいと思うけど」
「う……」

 なんで言葉に詰まっちゃうの。
 ちゃんと答えなきゃ、怪しまれてしまう。でも何て言おう?

 お互いに指輪をしない主義で――とか、仕事中はしないの、とか。でも仕事中以外にもし遭遇してつけていなかったら、おかしいよね?

 でも私、指輪なんて持っていないし、嘘をつき続けるために指輪を買うっていうのも変だしっていうか、そんなお金ないし。

「そう、いう……小野寺さんは、ご結婚などされていないのですか……?」

 手を掴まれていることに気が動転してしまって、質問に質問で返してしまった。

「どうだと思う?」
「どうって……」

 あ、また質問で返された。

 駆け引きみたいな会話に戸惑いながらも、直樹から目が離せない。挑発的な鋭い瞳に捉えられて、うまく返事できない。
< 67 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop