秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

これって私、嫌味を言われて攻撃されてる?
 何と返事していいか分からず、曖昧な笑みで返すしかなくなる。

「……ま、いいや。とにかくクリーニングできたら、また電話して」
「いや。あの……」

 クリーニングが出来上がったら、部屋に完了の札をかけることになっている。それを確認した住人は、コンシェルジュカウンターまで取りに来てもらうシステムだ。

「電話、絶対かけろよ」

 睨まれるように念押しされて、「できません」という言葉を封じられてしまった。
 付き合っていたときにこんな言葉を投げかけられたことはなかったし、彼の口から命令形の言葉が出てくるなんて驚いた。

 これ以上関わるのはよくないと思うのに、
うまく交わすことができないのはなぜ?

 これからどうするの?どうすればいいの……?

 不安がひしめく心の中に、ざわざわと燻っているものを感じる。
気がつかないフリをして、何も感じないフリをするしかない。
 私と直樹の恋は、随分前に終わったことなのだから――。

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