秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

 なので、どうしても自分のことは後回しになっていくけど、それでもいい。樹里がちゃんと不自由なく生活できていればいいと思っている。

 さて。
 準備が整って樹里のもとへ戻ったころには、彼女は全て食事を終えてテレビに夢中になっていた。本当なら傍で一緒に食事をしたいところだけど、朝はどうしても時間がない。
悪いと思いながらも一人で食事をしてもらうことにしている。

「さ、出よう」
「うん」
 
登園カバンと、着替えなどを入れたキルトバッグを持って、私たちは玄関を出て駐輪場に向かった。
 ヘッドレスト付きの赤い自転車の前かごに荷物を乗せているうちに、樹里は一人で後ろの席によじ登って乗ってスタンバイしてくれて助かる。

「さ、行くぞー」
「しゅっぱーつ!」

 電動アシストじゃないから、ぐっと強く脚に力を入れて走り出す。
 次に自転車を買うときは、絶対に電動アシスト付きがいいなと思うけれど、そのころにはきっと樹里は自分の自転車を乗るころだろうな。
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