秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

その最上階フロアに住み、悠々自適な生活を送っている。とはいえ、仕事で忙しいので、週末以外は寝に帰るだけなのだが。

 いつも通りにエントランスに入り、何気なくコンシェルジュカウンターに視線を向けた。

本当に何気なく。たまたまだった。

 一人の女性がそこで仕事をしている。うちのマンションのコンシェルジュの制服に身を包んだ黒髪の女性。長い髪を纏めており、きっちりとした印象。

 俺が入ってきたことに気が付いていないようで、パソコンに目を向けている。その顔が記憶とリンクする。

――椎名友里。

 あの頃と違って化粧をしているので、大人っぽくなっているとはいえ、凛とした印象的な目は変わらない。頬の感じも、唇の形も、俺が知っている彼女だった。

 どうしてここに?

 どうして俺のテリトリーの中にお前がいるんだ。
 そのままスルーすることができず、気が付けば友里に声をかけていた。

「……どうしてお前がここにいるんだ?」

 優しさなんて持ち合わせていない。どうしてここにいるのか?と強い口調で責めたてるように問い詰める。
< 78 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop