秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「旦那に指輪してって言われない? 俺だったら奥さんに四六時中つけておいて欲しいと思うけど」
俺だったら――
指輪をしてほしい。
俺のものだって分かるようにしておきたい。
友里の左薬指を見て、過去に「ここには、俺の贈った指輪をつけてほしい」と思っていたことを思い出す。
折れてしまいそうなほど細い指。ネイルをしていないナチュラルな指先は、少しだけ荒れていて、家事をしているんだなということが窺える。
人妻に何をしているんだと思うのに、友里の手からなかなか目を離せない。
好きだからしているんじゃない。これは友里を困らせるためだ。仕返しをするためにこうしているだけ――
この行動に理由が必要だ。だから帳尻を合わせるように、そう考える。
そのあとも、わざと困らせることばかりを言って、返事を聞かずに扉を閉めた。
クリーニングが終わったら電話しろだなんて、無理難題を言う迷惑な住人じゃないか。子どもみたいなことをして、呆れられているかもしれない。
そう思うのに、俺の行動は止まらなかった。