秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

聞いていて、だんだんと頭に血が昇っていくのを感じる。友里が明らかに嫌がっているのに、この男はそんなことも分からないのか。

 ふたりに近づき、俺は間を割って話しかける。

「……お話中失礼します。上階のバーの貸し切り予約をしたいのですが、よろしいですか?」
「あ、はい! かしこまりました」

 特に用もない男に口説かれている友里を助けるため、咄嗟に嘘をついたのだが、予想以上に反応がよかった。うまく友里を助けてあげられたかもしれない。

「お日にちはいつにされますか?」
「金曜日にお願いします。夜の七時ごろ。友人たちと軽めのパーティをしたいと思っているんですけど、こちらの収容人数って何人くらいですか?」
「ええと……」

 男はしばらく俺たちのやり取りを見ていたが、なかなか終わらないので、そのまま立ち去っていった。その姿を見送り、俺たちは嘘の会話を止める。

「……厄介な奴もいるんだな」
「助けてくださって、ありがとうございます」
「別にそういうつもりはない。ただ予約を入れたかっただけだ」

 友里が他の男に言い寄られていて、うまく交わせていないのに腹が立っただけだ。
 
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