秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「……はぁ。――――よし」

 ため息を漏らしたあと、すうっと息を吸って気合を入れる。そしてもう一度自転車に跨り、次は都心へ向かう。
 ここから自転車で三十分。
 大きな駅から徒歩五分ほど場所にある高級タワーマンションに到着すると、裏口に入っていく。
 地下駐輪場に自転車を停めてそこから従業員入り口に続き、ロッカールームへ進む。
 スタッフに与えられた空間でさえ、上品な雰囲気になっていて、ここで制服に着替えると完全に仕事モードへと切り替わる。

 私は『エランコミュニケーションズ』という会社に所属していて、この高級マンションのコンシェルジュとして派遣されている。

 三交代制となっていて朝勤務、夕勤務、深夜勤務となっていて、私はその中で朝がメインだ。
 子どもがいるのでやむ負えない急な欠勤や早退になる場合もあるけれど、その場合は本社に連絡をすれば代わりの人材を準備してくれて対応してもらえるので助かっている。
 そのようなシステムでなければ、私のような子育て中の女性が働くのは難しいだろう。
< 9 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop