秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

 他人行儀な口調がいちいち気に障るが、頭を下げてお礼をする友里を見ていると、少しは役に立てたのかなと思う。

 だけど助けたのだと思われたくなくて、悪態をついてしまう。

「あんなふうによく口説かれるのか?」
「単なる時間潰しだと思います。挨拶代わりの冗談というか……」

 いや、違うだろ。あの男は本気で友里を口説こうとしていたじゃないか。それを冗談と受け取るなんて……もっと警戒しろよ。

「ちゃんと既婚者だって言っているかよ?」
「ええ。子どももいると伝えているのですが、あまり関係ないみたいです。からかわれているんだと思います」
「あのな」

 はぁ、とため息をついて友里の顔を見据える。
 確かに友里は可愛い。綺麗と可愛いをうまい具合に融合した感じで、子どもがいるようには思えない。

きっちりとしたベージュの制服もよく似合っていて、清潔感と聡明な雰囲気が漂っている。こういう女性を好む男性は多いだろう。
< 90 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop