秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

 今回俺が通りかかったからよかったものの、一人のときにうまく対処できるのか心配になってくる。

「もっと気をつけろ。世の中には変な男が多いんだから」
「……ありがとうごさいます」

 友里の頬かふわっと赤に染まる。少し恥ずかしそうに俯くなんて、思ってもみなかったから俺もつられて一緒に照れてしまう。
 それを悟られまいと、すぐに背を向けた。

「じゃあな、俺は行く」
「いってらっしゃいませ」

 仕事上の挨拶の「いってらっしゃい」なのに、友里に言われると胸が高鳴り、高揚した気持ちになる。気合が入るというのか、引き締まった気持ちになって、今日も仕事を頑張ろうと思える。

 あー、何なんだ、これは。

 友里のことを恨んでいたはずじゃないか。俺を弄んだ悪女だと思っていたはずなのに、言葉を交わすたびに友里に惹かれていく。

 友里のことをあんなに憎いと思っていたのは、好きになってもらえなかったという悲しさの八つ当たりだったのだと気づく。
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