マリッジリング〜絶対に、渡さない〜

「ちょっと肌寒いな」
「そうだね、この間まであんなに暑かったのに」


乾いた冷たい風と、薄暗くなってきた頭上。
だんだん日暮れが早くなってきた秋の空を見上げていると、また一つ季節が巡ったんだなぁ…なんて。
ふとそんなことを思った。

いつからか、時の流れを早く感じるようになった気がする。

暖かい春がきたかと思ったら、あっという間に雨が降り始めて。
照りつける太陽が眩しくて、暑い暑いと口にしていた夏も、気がつけば終わってしまっている。

毎年、夏が終わって秋の風を感じ始めると無性に寂しくなるようになった。

昔は夏休みが楽しみで、たくさん遊べる夏が好きだったのに。
大人になって、社会人になって。
結婚して、子供たちが生まれて。

季節が変わるのがどんどん早くなった今は、いろいろなことを考えるようになった。


結婚して十年。
長いようで、でも、あっという間に過ぎていた十年。

少し前を歩く亜実と亜矢の背がまた少し伸びた気がした瞬間、このまま、今のまま、時間が止まらないかな…なんて。

何故かふと、そんな風に思ってしまっていた。

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