マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
さらに、それからほんの数秒で寝ぼけ眼の亜矢も二階から駆け降りてきたかと思ったら。
『パパ、抱っこ!』と大地に向かって両手を上げた。
すると大地はそんな亜矢の前にすぐさま屈んで。
『よし!抱っこ抱っこ!』と言いながら、亜矢の体を軽々と抱き上げた。
キャッキャとはしゃぐ、娘たちの声。
三人の笑顔を見ていると…怒りに満ちていた私の顔も、自然と緩んでいく。
そして、次の瞬間。
『マーマ!』
亜矢がそう言って私に手を伸ばすと、亜実が突然腰に飛びついてきて、そのまま背中をグッと押してきた。
その勢いで、一歩…二歩と足が動いた私は、押されたはずみで亜矢を抱く大地と肩が触れ合うほど近付いていて。
『ママつかまえたー!』
無邪気な声を上げる亜矢に腕を引かれると、その直後…気付けば大地にも、そっと肩を抱かれていた。
そして、そんな私たちを見上げた亜実も。
『ずるーい!亜実もー!』
そう言って私たちに、ぎゅーっとくっついてきた。