マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
 
 
『やっとぜんいんそろったね!』


声を弾ませ私を見上げる亜実の姿に、胸の奥がきゅっと締め付けられた。

大地との話はまだ何も解決していない。
心の中は、どんよりと曇ったままだ。

だけど…唯一無二の家族の存在は、やっぱり大切で。
子供たちのこの無邪気な笑顔だけは、何があっても、何をしてでも守りたいと複雑な思いが駆け巡る。

私たちは夫婦である以上に、この子たちの親としての責任がある。
夫婦間のいざこざで不安にさせるようなことは…しちゃいけない。

そう思い直した私は、頭をスパッと切り替えた。


『よし!全員揃ったし、今日はみんなで朝ごはん食べれるね。どうしよう、ごはん?パン?どっちがいい!?』


そして笑顔で問いかけると、亜実は数秒考えてから口を開いた。


『パパはどっちがいい!?』


大地を見上げ、首を傾げる亜実の姿に思わず目尻が下がる。

自分よりもパパが食べたいものを優先しようとする、そんな優しい亜実の気持ちに胸を打たれた…次の瞬間。

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