マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
だけど、次の瞬間。
『また、俺がいない時にでもゆっくりお喋りしに来てあげてよ』
『えっ?いない…時?』
『景ちゃんとか玲ちゃんとも、よくママ会みたいなことしてるようだから』
大地がそう言ってこちらを振り向いて。
『な、亜紀?』と、私に聞いた直後、その後ろにいる彼女が不満そうな表情で大地の後ろ姿を見ていることに気が付くと、何故か心に余裕が生まれていった。
私の勝ち。
心のどこかでそう感じてしまったからかもしれない。
嫌な女だな、と自分で自分のことを情けなく思う。
勝った負けたの話じゃないはずなのに、そんな風に考えるなんて…バカみたいで。
でも、この時は溢れてくる感情を抑えられなかった。
大地がきちんと彼女に対して線引きをしてくれたようで…ホッとして。
『うん、また女子会しよう。大地のいない時に』
彼女に対しても、満面の笑みを浮かべてそう言えたんだと思う。
すると彼女も、気味が悪いほどにっこりと私に微笑んで。
『はい、また…女子会しましょうね。お邪魔しました』
そう言って早々と帰って行ったのだった。