マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
 
 
『あの夜、病院での診察が終わった後、処方される薬を病院の待合で待ってたんだけど』


話に頷きつつ、ぼんやりとその情景を浮かべる。


『でも、リュウ君がかなりグッタリしてて、リリカちゃんに車で寝かせててもいいですかって聞かれてさ』


大地はそう言われたので、窓口であとどのくらいかかるかを確認し、まだ十分から十五分ほどかかると言われたため彼女の頼みを聞いてリュウ君を抱き車に運んだ。

ここまでは、すんなりと理解できた。

しかし、話の続きを聞くにつれ、やっぱりあの人を変だと感じた。

大地がリュウ君を後部座席に寝かせると、何故か突然彼女は泣き出して。

驚いた大地は涙の理由もわからず、大丈夫?と彼女に声を掛けた。

すると彼女はリュウをお願いします、と言い残し薬を受け取るため再び病院に戻ったという。

それから十分ほどして彼女は車に戻ってきたらしいけれど…涙はまだ止まっておらず、大地もあまり声をかけられないまま車は彼女達の住むアパート前まで帰ってきた。
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