マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
シングルマザーで大変な思いをしている人はこの世の中たくさんいると思う。
家族とうまくいっていない、血の繋がりのある親族がいない。
そういう人も、彼女に限らず一定数はいるはずだ。
だからこそ、大地にはちゃんとわかってほしくて。
『優しいのは、大地の良いところだよ?でも、優しいからこそ…心配なの』
彼女に同情したり、可哀想な目で見ることがないように…忠告したかった。
『うん、わかってる。でも…』
『でもじゃないよ。情けをかけるまでの間柄じゃないの、わかるでしょう?』
少し強い口調でそう言うと大地は小さく頷き、反省した子供かのように潤んだ目で私を見つめた。