マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
結婚記念日
「わぁ!すごい!これ、全部二人で飾ったの?」
‘‘いいって言うまで降りて来ないで’’と、二階でしばらく待たされていた私が、やっと戻ってきた二人に手を引かれながら一階のリビングに戻ると、驚きのあまり目を見開いた。
いつもは真っ白なはずの壁には‘‘けっこんきねんびおめでとう’’という文字が並び、折り紙で作った色とりどりの手作りの花がその文字を囲むように愛らしく飾られている。
「うん!亜実と亜矢でぜーんぶしたんだよ!すごい!?」
なんだか得意げに、だけどまだ幼さが垣間見える八歳の長女、亜実の笑顔に私の顔からも自然と笑顔がこぼれた。
「うん、すごいよ亜実!天才!お花も上手に作ってるし文字もすっごく綺麗に貼れてるし」
「ママー、亜矢もお姉ちゃんのお手伝いしたんだよ!エライ!?」
亜実の頭を優しく撫でていると、わざとらしく私の手を亜実から離すように次女の小さな体がぐいっと間に割り込んできた。
「亜矢も本当すごい!上手に出来たね、ママびっくりしちゃったよ」
そう言いながら五歳の亜矢をひょいっと抱えると、私は力一杯その体をぎゅっと抱きしめた。