マリッジリング〜絶対に、渡さない〜

「今日…遅くなるの?」
「え?ならないけど」
「え?だって…」
「とりあえず出かけるから、用意しておいて。あと三十分くらいで帰れるから」
「えっ?三十分って、何で?早くない?」


想定外の大地の言葉に、思わず声が大きくなった。


「実は今日、ちょっと半休取っててさ」
「半休?聞いてないけど」
「や、だから…あれだよ。大事な日だから色々と…まぁ、また後でそれは話すよ」
「…うん」


半休を取っていたなんて知らなかったけれど、大事な日だと言われたら、今日が結婚記念日だということを忘れていなかったんだとホッとしている自分がいた。


「とりあえず、亜実たちも着替えさせといて。ちょっと可愛いくオシャレしてくれてたら嬉しいかな」
「わかった」


電話を終えた私は、ソファに座っていた二人に呼びかけると急いで二階に上がった。
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