マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
「ただいまー」
一階から聞こえてきた大地の声で、ハッと我に返った。
「おかえりー!」
言いながら、全身が映る大きな鏡の前で自分の姿を確認する。
「亜実も亜矢も先におりてていいよ」
「はーい!」
僅かな時間しかなかったけれど、娘たちは揃いのワンピースに着替えさせ髪も可愛いく整えた。
私も久しぶりにお気に入りのセットアップの服を着て、髪はヘアアイロンで軽く巻きゆるくアップスタイルにした。
今からどこに連れて行ってくれるかはわからないけれど、気持ちはすでに舞い上がってしまっている。
普段よりも少しオシャレをした自分が、鏡の中で照れくさそうに笑顔を作った。