マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
「お!急だったわりになかなか綺麗に仕上がってるな」
一階に降りそっとリビングを覗くと、ドアを開けた途端に大地からそんな声をかけられた。
「そ、そう?」
平静を装いながらも、綺麗なんて言われてしまうと悪い気はしない。
でも、ちょっと張り切りすぎとか思ったかな?
「うん。亜紀のそんな格好、久しぶりに見た気がする。あと、この飾り付け亜実たちがしたんだって?本当感動だよ…帰ってきたら写真撮ろう」
はにかむように笑った大地は、そう言いながらそばにいた亜矢を軽々と抱き上げた。
「あ、そうだ。今日は飲むし行きは電車、帰りはタクシー。オッケー?」
「うん」
「よし、じゃあ亜実、そろそろ行くぞー」
「はーい!」
こちらに駆け寄ってきた亜実は、返事をしながら真っ先に玄関に向かってバタバタと走っていく。
8歳とはいえまだまだ子供だ。
そんな姿に微笑んだ私たちも、その後を追うように揃って家を出た。