隣人はクールな同期でした。
急に振られたからか
少し驚いた表情を浮かべる陽向さん。
無表情にこちらを見つめる煌月に
あえて目を合わせず
アタシは彼を外へと連れ出した。


「セツナ?
 まだ仕事って…」

「…すみません。
 嘘、つきました」

「嘘…?」

「…なんとなく
 あの場にいたくなかったので…」


『あなたのためです』なんて
立証出来るモノはないし
アタシの勘違いかもしれないから
余計な事は言えない。


「そっか…
 まぁ…わかる気がする。
 俺もそうだし…」


そう言って陽向さんは
遠くを見つめながら
溜め息交じりに本音を零した。


やっぱり
何かあったんだ。


「煌月と
 何を話していたんですか?」


早乙女さんじゃないけど
アタシも本人に直接同じ事を聞くと…


「…セツナ…」


遠くを見つめていた彼は
今度はアタシに視線を移し
とても寂しそうな表情で
何かを言いたげに口を開きかけた。


…けれど。


「…いや、たいした話じゃないよ。
 仕事の話をしてただけ。
 それより、この後はどうする?」


一度、口を噤んだかと思えば
ニコッと笑顔で切り返した。

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