隣人はクールな同期でした。
嘘は明白だった。

それでも
隠し誤魔化すほど言えない話でもしていたんだろうなとは
察しがつく。


「今日は…もう帰りますね」

「そっか…わかった。
 じゃぁ家まで送っていくよ」


陽向さんは結局本当の事は何も言わず
アタシをマンションまで送ってくれて
『じゃぁまた明日、仕事で…』と
寂しそうな笑顔で手を振り別れた。


彼の元気のない感じとは裏腹に
煌月の、しれっとした態度からしてみると
アイツが何か変な事を言って
複雑にさせたのかもね。
イロイロあるんだろう、男同士も。


「まぁ…いっか。」


他人の話に口を挟むのも
どうかと思うし。

だからアタシは
その件については気にしない事にした。



けれどせっかく陽向さんが選んでくれた浴衣だったけど
花火大会は雨天やら仕事の残業やらが重なり
ことごとく中止を余儀なくされてしまい着れずじまい。

だけど
買ってくれた当人からの連絡は一切なかったし
“2人で花火”とか考えているんだろうなって読みは
外れていたみたい。


なんだか
モヤっとしたまま
夏は過ぎていった―――


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