隣人はクールな同期でした。
部屋の前まで来て
ふと疑問が頭に浮かんだ。

そういえば
引っ越したのに
寝泊まり出来る家具なんてあるんだろうか…と。


「鍵は?出せるの?」

「子供じゃないから…
 それくらい…自分で出来る」

「はいはい。
 出来そうもないから言ってんの。
 ちょっと大人しくしてて」


煌月の鞄からキーケースを取り出し
コイツに代わって開錠。


「ほら、もう少しだからしっかりして」


まるでお母さんみたいになってる自分に
笑いそうになりながら
今にも倒れ込みそうな煌月の体を
なんとか支えながら一緒に玄関に入った。


「なんだろ…
 妙な違和感…」


室内に感じた“無”の感覚に
煌月より先に靴を脱いで
部屋に入り、愕然とした。


「何もないじゃん…」


想像していた通り
どの部屋にも家具や家電等
一切置いてなくて
生活していたとは思えないほど
何もなくなっていた。


「本格的に開け放すつもりなんだ…」


殺風景な部屋を見渡しながら
本当に引っ越すんだなって
なんとなく複雑な思いでいると
気配なく後ろから煌月が現れ。


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