時には優しく…微笑みを
「…櫻井…」

私が言おうとした時、課長が喋りだした。

「俺から言わせてくれ。櫻井、お前が好きだ」

え、

「え?あ、あの…」

「こんな年上の、仕事じゃ鬼だって言われてる俺からの告白なんて、お前からしたら迷惑なんだろうがな。ずっと好きだったんだ…、って泣くなよ!そ、そんなに嫌だったのか…」

泣くなよ?
課長に言われ、私は自分の頬につたっている涙に触れ、泣いていることに気がついた。

「か、課長…嫌じゃない…」

「え?な、なんて」

「嫌なんかじゃない!私、課長の事が好きなんです」

言ってしまった。
課長の突然の告白に焦った私は、体を乗り出し、好きなんですと告白していた。

「ほ、ほんとか…好きって…」

「っ、は…い。好きです。…あ、あの私…」

「櫻井!!嘘だって言うなよ?もうすぐ撤回しないからな!」

そう言うと、私は課長に腕を引っ張られ胸の中に抱きしめられた。

「か、課長」

「櫻井…いや、朋香。そう呼んでいいよな?」

「か、課長」

「さすがに、課長はないだろ?会社にいるみたいだ。俺に鬼でいてほしいのか?」

「っ、い…イジワルです。か、課…拓海さん」

恥ずかしくて、なかなか拓海さんと呼べない。
課長じゃダメなのか…鬼でいてほしいのかって…その時点で鬼じゃない。
もう…。

「朋香、好きだよ」

え?と顔を上げようとした私に、拓海さんの手が頭の後ろに当てられ、そのまま引き寄せられ、キスをした。

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