時には優しく…微笑みを
結子さんが部屋から出てすぐに、入れ替わるように拓海さんが部屋に入ってきた。

「よかった…佐々木が来てくれたから救急車呼ばなかったんだけど、意識戻ってよかった…」

拓海さんは、私の手を握りながら、よかったと何度も言っていた。

「すみません、心配おかけしました…」

どうして、あんな事したんだろう。
あんな事を思い出したんだろう…、考えれば考える程苦しくなるのが分かった。

部屋に入ってきた結子さんが、拓海さんに席を外してと部屋から出るよう促した。
結子さんに言われるまま、拓海さんは部屋の外に出た。

私に向き直った結子さんが、ゆっくり話しかけてきた。

「朋香ちゃん。思い出すなって言っても無理なんだろうけど、考えちゃだめ。過去の事に向き合わないといけないけれど、今のあなたはそれが出来る程強くないわ。今の事だけを考えなさい。分かった?私や諒太もいるから、ここにいるのが辛かったら私の所に来てもいいわ。諒太に菅野君の所に来てもらうから」

「そ、そんな結子さん達に迷惑なんて…」

「迷惑なんて、考えないの。分かった?」

「はい」

私の身体はどうしてしまったんだろう。
こんな私じゃ、拓海さん…課長に迷惑をかけてしまう。

ただの部下に戻った方がいいのかな…
< 107 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop