時には優しく…微笑みを
「なぁ、諒太。俺どうしたらいいんだよ」

俺は頭を抱えた。
どうしていいのか、本当に分からなかった。

「拓海、そばで支えるしかないんじゃないか?お前も同じ傷を持っていたから分かるだろ?気持ちは。よりそえるのは拓海だけだと思うぞ?」

同じ傷か…
俺は、朋香と違って男だ。
同じ傷だったとしても、朋香の方がショックだったんじゃないだろうか。
初めての相手なら、なおさら…の事。

「俺で大丈夫かな…」

漏れた不安な言葉に、諒太がキレた。

「拓海がそんなんでどーすんだよ!お前がしっかり支えてやれよ!誰にも渡したくないんだろ?違うのかよ!」

諒太に言われて頭を打った。
そうだ、誰にも渡したくない、その気持ちに変わりはない。
あいつの横で笑っていたいんだ、だから…

「そう、だったな…俺…、諒太サンキュ」

諒太に背中を力の限り叩かれた。

「しっかりしろよ!泣き言言うなよ!」

「っ、痛っ、お前手加減しろよ、さすがに痛いぞ」

背中を気にしていると、

「当たり前だろ、痛くしたんだよ。朋香ちゃんの心の痛みはこんなもんじゃないだろ」

「……そうだな」

それから俺は、諒太と朝まで語り合った。
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