時には優しく…微笑みを
彼氏を連れて来るまでに、一度帰ってこいと言われてしまった。
黙っていると、母は重ねて言ってきた。

「電話じゃ、分からんから直接話聞くから。そん時にお父さんにも話したらええやん?あんた、盆にも帰ってけえへんかってんから、それぐらいしてもええんとちゃうの?」

「うっ…それは…」

「それに、朋香。あんた上司が相手って言ってたけど、それって前に聞いた事がある鬼上司の事か?」

はっ、しまった。
母には拓海さんの事を、鬼だの、怖いだの、愚痴をたくさん言っていた事を。

「ちゃうよ。その人とはちゃうから」

「そう。その人なんやね。じゃ、尚更話聞かなあかんわ。分かった?帰っといで」

「はい…分かりました」

母に勝てる訳もなく、大阪に帰ると返事をした。
しかも電話を切る時、母がこの事一哉にも話しとくからねー、って。

ちょ、ちょっと待って!
一哉兄さんって…

やられた。もう多分、母は一哉兄さんに連絡してるだろう。
年が離れているせいもあり、2人の兄からは随分可愛がってもらった私。
特に、一哉兄さんは異常なくらいに心配性で…学生時代、事あるごとに、私に近づく男子を睨んでいた。

そんな一哉兄さんが、拓海さんをみたらどうなるんだろう。
心配事がまた増えた。
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