時には優しく…微笑みを
告白
仕事が終わり、課長より先に出た私は近くのスーパーで買い物をしてから帰った。
お世話になってるんだから、これぐらいはして返さないと…
あ、でも彼女が知ったら怒るのかな…どうなんだろう、と思いながらも、課長から聞いた訳でもないから、と自分に良いように言い訳をして食材を買って帰った。

課長の家に帰った私は慌てて料理にかかった。
料理が出来上がった時に、ちょうど課長が帰ってきた。

「おかえりなさい、課長。早かったですね」

「あ、あぁ。ただいま。昨日は帰れなくて悪かった」

私に謝らなくてもいいのに…

「課長、私に謝らなくてもいいですよ。ここ、課長の家なんですから。あ、でも心配してしまうから、連絡は欲しかったですね」

「…っそうだな…」

笑って答えた。
自分なりの精一杯の笑顔で話かけた。
そんな私にびっくりしたのか、課長は言葉を濁した。

「ご飯出来てますよ。食べます?それとも食べてきました?」

「あ、いや。俺の分があるのか?」

「もちろん。お世話になってる分は返さないと。あ、先に着替えてきて下さいね」

分かった、と課長は言うと自分の部屋に戻った。
すぐに、普段着に着替えた課長が出てきた。

「いい匂いだな。今日は中華か」

「はい。お嫌いでしたか?」

「いや、好きだよ。食べてもいいのか?」

どうぞ、と言うと課長は、何度も美味しいと言いながら食事を進めていった。
私も課長と向き合うようにイスに座り、一緒に食事をした。

ただ黙々と食べていたが、沈黙が重い…
何か話さなきゃ…何か。

「あ、そうだ。課長、私部屋が決まりそうなんです。予定より早く出られそうですよ」

まだ決まってもないのに、私は口走ってしまっていた。



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