時には優しく…微笑みを
「どうする?決めるんなら、話通しておくよ。今なら間に合うし」

少し考えたい…そう言いたかったけれど、考えている時間はなかった。

迷っていると、仲川さんが話しかけてきた。

「拓海の事で悩んでるの?」

「え?な、な、なんでですかっ」

「いや、なんとなくさ。あんなに早く決めたい、って言ってたのに悩んでるから、拓海絡みかなぁ、って」

「そ、そんな…」

私の中で、仲川さんなら課長の付き合っていた人を知ってるかも?なんて思ってしまった。
だ、だめよ。本人がいないのに、元カノの話とか、プライベートな事を聞くなんて…

「ね、何一人でブツブツ言ってるの?拓海の元カノが何?」

「…えぇ!な、なんですかっ、それ!」

「ハハハッ、分かりやすいね。朋香ちゃん。マジで、今元カノがって言ったけど、何、拓海そいつと会ってたのか?」

笑ったかと思ったら仲川さんは、急に真剣な表情を見せて、私の両肩をガシッと掴んで迫ってきた。

「え、あ、あの。この間、出かけた時にたまたま会ったんです」

あまりの迫力に私はついその事を話してしまった。

「チッ…で、それからどうなったんだ?」

「え、あ、あの…」

迫ってくる仲川さんが怖かった。いつも親しみやすい笑顔で、話しかけてくれる仲川さんとは別人だった。

私は返事が出来ずに固まってしまっていた。
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