時には優しく…微笑みを
「あ、ご、ごめん。怖かったよね?ごめんね。朋香ちゃん」


「いえ…」

私が小さく怖いと言った声が聞こえたのか、仲川さんが掴んでいた肩を離してくれた。そして、少し何かを考え始めた。

「朋香ちゃん、これから時間ある?ちょっと話したいんだ。いいかな?」

私はその勢いに負けて、はいと返事をしていた。

内見したマンションから出ると、仲川さんはどこかに電話をかけた。
そして、車を発進させた。


「結子も来るから安心して。取って食う訳じゃないから」

「え?あ、いや…」

「朋香ちゃん、顔に出てるから。何されるんだろう?って。ハハッ、大丈夫だって」

「いや、あの仲川さんがいつもと違ったんで、びっくりしたんです」

「……それに、その仲川さんって言うのもやめない?諒太でいいよ。ね?」

「へ?あの、その…」

「分かった?」

「は、はい」

強引です。
大阪のノリとは違う、何かこう…
仲川さん改め、諒太さんに私は名前で呼ぶように言われてしまった。

はぁ…


「さぁ、着いたよ。行こうか」

「は、はい」

諒太さんに促されて車から降りた私は、一緒にエレベーターに乗った。
もう結子さんは家に来ているから、安心して部屋に入ってね、と。
本当かなぁ、と思っていると諒太さんの部屋が開き、結子さんが出迎えてくれた。

「いらっしゃい。ごめんね、急に連行なんて真似して」

「いえ、そんな…」

挨拶もそこそこに、部屋に通してもらった私は、結子さんからいきなり投げかけられた。

「諒太から聞いたけど、菅野君と彩奈が会ったって本当なの?」
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