時には優しく…微笑みを
「朋香ちゃんと初めて会った時に言ったよね?同棲したら?って。あれは恋愛から離れてる拓海にやっと彼女が出来たんだって、本当に思ったんだ。自分から部下とは言え、俺に紹介するなんて事なかったから」

これは、喜んでいい事なのか。
ますます分からなくなっていた。

「朋香ちゃん、菅野君が話してない事を私達が、あなたに話す事は、ルール違反かもしれない。でも言っておくわね」

「え、でも…」

ルール違反だと分かっていて、聞いてもいいんだろうか。
どうしたら…

「ごめんね。菅野君はね、あなたと同じ傷を持ってるの…」

同じ傷…
な、何…同じ傷って…

あの事…

っ、胸が苦しくなってきた。

「彩奈が浮気したの。それが別れた原因、しかも浮気の現場を菅野君が見たの…」

浮気…現場を見たって…

「…っ、はぁ…っ…苦し…」

「…大丈夫?朋香ちゃん」

結子さんの声が遠くなった。
自分でも過呼吸になっているのが、分かった。
だめ、上手く呼吸が出来ない…

「…っ、はぁ…」

「諒太、袋持ってきて!」

手慣れた様子で、結子さんが紙袋に空気を入れると私に吸えと出してきた。
私はその袋に口を重ね、大きく呼吸を繰り返した。

どれくらいしたのか、少し落ち着いた私は意識を手放した。

「朋香ちゃん?朋香ちゃん?」

「おい、朋香ちゃん?」

二人の声が遠くでしていた。
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