時には優しく…微笑みを
「なんで?私の何があかんかったの?」

「それがうっとおしいんだよ。俺だって、こっちいるだけの関係だと思ってたから付き合ってたんだ。本命はお前が見た通りあの人なんだ。だから別れるって言ってるんどろ?いいかげんあにしろよ、しつこいんだよ!」

「私の事好きって言ってくれたやん。東京に来いって言ってくれたやん…みんな嘘やったん?」

「うるせーな!都合のいいおんなだったって事、いい加減認めろよ。二度と俺の前に顔見せんなよ」

「…って、待って!」

ガバッと体を起こした私を誰かが抱き留めた。

「大丈夫か?」

「な、なんで…課長…」

課長が私の体を抱き留めていた。
どうして…
私…胸を押さえた私に、優しく背中をさすりながら、もう一回寝た方がいい、と横たわらせてくれた。
そして、濡れた頬を指で拭い、その手を額に置いて、ここにいるから安心しろ、と。言ってくれた。

「課長、どうして…」

「諒太に呼ばれたんだ。櫻井が倒れだって。慌てて来たんだ」

「そうよ。菅野君来るの早かったんだから。あ、ごめんなさいね、邪魔しちゃって」

「あ、結子さん。ごめんなさい…私」

「いいのよ。私達こそ、ごめんね。朋香ちゃんの事聞いていたのに、思い出させてしまって…」

「結子がいてくれてよかったよ。俺だけだったら対応出来なかったからな」

「全くだよ、佐々木がいなかったからと思うと、俺もゾッとするよ。助かったよ、佐々木」

「やだ、菅野君まで。当たり前じゃない。私、看護師よ?出来て当たり前なの、それより朋香ちゃんもう少し寝かせてあげて?」

「あ、あぁそうだな。櫻井、もう少し横になったら、帰ろうか?安心して少し寝ろ。分かったな?」

そう言うと、課長は二人からは見えないように私の手を握って大丈夫だからと言ってくれた。
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