時には優しく…微笑みを
落ち着け、朋香。
課長はただの優しさから、私を慰めてくれただけ。
それ以上もそれ以下もない。
深く気にしちゃダメ。

課長の優しさに甘えたらあかんよ、朋香。

分かってる。

自分自身に言い聞かせていた。

「俺もコーヒーもらおうかな…」

気がつくと課長が後ろに立っていた。

「あ、はい。ブラックでいいですか?」

「あぁ。頼む」

リビングのソファに座った課長に、淹れたてのコーヒーを出した。
横に腰をかけた私に課長は

「…櫻井、入社した時から変わってないな…」

「え?何がですか?」

いきなり、入社した時から変わっていないと言われ、何の事を言われているのか分からなかった。

「なんで、俺がこんなに櫻井に関わるんだろう?とか思ってないか?まぁ、思って当然だがな」

「…そ、それは」

「櫻井が入ってきた時な、俺が指導係になって、正直しんどかっただろ?」

「……はい。鬼かと思いました」

鬼かと…は聞こえるか聞こえない小さな声で言ったつもりだった。

「ハハッ、鬼だからな実際。周りにも手加減しろとは言われたんだ。でも仕事に妥協はしたくなかったし、営業部で出来る人間をやっぱり作りたいじゃないか?だから厳しめでやったんだ。櫻井もしっかりついてきてくれたしな」

鬼って聞こえてたんだ…。
笑ってるよ、課長。
だけど、その笑った顔が急に真剣な表情になった。
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