扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「あ、あの…そういうの…困る」



変にあの人と重なり恐怖を感じてビクとなる。



「えっ…?」



「………」



だけど、私の困惑の態度によそに彼は手にしている本を私に渡してきた。



「これ、読んでみてよ」



「えっ」



「きっと、面白いよ」



「………」



そのまま彼は私から去っていきカウンターの方へと戻っていった。



「………」



しばらく本をじーっと眺め、ようやくしてカウンターへと向かった。




「あの、これ」



カウンターにて戸惑いながらも渡されたアリスの本を彼に渡した。



「はい、お預かりしますね」



「………」



また柔らかい彼の仕草をぼーっと見ながら待った。



すると、彼はやんわりした声音で私に伝える。



「別に俺は君に酷い事は何もしないよ。
ただ、君が気になってずっと見ていたのは本当」



「……」



その瞬間、ぐいっと私の手首を掴み引き寄せ顔を近付けられる。



「あ、あのっ」



「この本を読んで気になったら俺に会いに来てよ」



「えっ」



「会いに来てよ。そうしたら、きっと大丈夫だから」



彼はそっと私の頬にまた触れる。



2度目はなんとなく引き剥がす事はできなかった。



「………」



その手があまりにも暖かく優しいものだったから。



違うのかな?



あの人と……。



彼は。

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