扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「それじゃあ、教室戻りますね」



「うん、またおいで」



星都先生はそう言ってヒラヒラと手を振る。



保健室を出ようと扉に手を掛けかけたその時。



「!」



先に扉が開き目の前に現れたのは、あの人だった。



(っ)



「あ、やあ」



彼は軽く私に挨拶しただけで保健室へと入って私はそのまま何事もなかったかのように保健室を出ては、1・2歩歩いた所で立ち止まった。



(びっびっくりしたあ!)



あまりにも突然の登場に思わず心が高鳴った。



それにしても、彼は結構平然にしてたけど驚きとかなかったのだろうか。



それか分かっていたとか?



保健室から楽しそうな声が聞こえてくる。



(仲いいのかな)



星都先生と親しいんだ。



そう思っていると、保健室から出てくる。



「ちぇーだめか」



「………」



保健室から出て来て、私の姿に呼び止める。



「ねえ、待って」



「!」



彼は嬉しそうな笑顔で向けてくる。



「えへへ、また会ったね!」



「は、はい…」



本当にまた会ってしまった。



彼は軽い足踏みをしながら近付いてくる。



「保健室に何か用だったの」



「えっあ…」



なんとなく言われた言葉に、思わず手当てしてもらった手を後ろに隠す。



「………」



変に思われたくなく思わず隠してしまった。



「ねえ、今日の放課後って空いてる?」



彼は気にしない素振りで話題を変える。



「えっ」



「言ったよね?
次会った時は良い所に連れてあげるって」



「ああ」



そういえば、以前の時にそんな事を言われていた。



「空いてる?」



「はい…」



「良かった! じゃあ、放課後 裏庭に来て」



「裏庭ですか?」



「そう裏庭! きっと良い所だよ」



何をそんなに嬉しいのか分からないが、嬉しそうなのは事実だ。



いったい何があるって言うのだろうか?



気になるような怖いような。



そういえば、いつの間にか彼に対して怖いという感情は消えていた事に気付いた。



この人には不思議な魅力を感じるものがあるのだろうか?




放課後、今日は掃除当番があったのでいつも通りに終わらせ、いつも通りに帰る準備をした。



そんな時に限ってだいたいは何か邪魔が起きるのが決まり文句なのだけど、今日に限って本当に何も起きない。



私は制鞄を持って言われた通りの裏庭に向かった。



この時の私は、この先 何が起きるかなんて予想もせずに、何があるのだろうしか考えていなかった。


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