扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「あの、ここは?」



「うん?」



気になって仕方なかった私はオズオズと尋ねてみた。



「ひみつ♪」



彼はそう言ってイタズラ気に笑って見せる。



「……」



何そのあざとい女子がやるような言い方は、となんとなく思ってしまったけど、気にしないようにした。



「!?」



すると彼は壁に手を付けてどこかを触り始める。



触った位置からどこからとなく何かが出てくる。



(あれは、ぬいぐるみ?)



手に触った真下から少々グロかわいい表現があっているかは分からないが、なんとも言えない顔のしたぬいぐるみが出てきた。



「かわいいでしょ、このぬいぐるみ」



(かわいい…のかな)



確かに人によってはかわいいと思う人もいるだろうけど、私はどうだろう。



「かわいい…かな」



「だよね!」



この人はグロいものが好きなんだろうか。



でも、見た目によってはかわいいのかもしれない。



(でも)



ちょっと怖いかな…。



そんな事を思いつつも、彼はそっとぬいぐるみの赤くギラギラした目をポチっと電気のスイッチを押すかのように軽く押した。



すると忽然と床の一箇所に人が入れる程の丸めのスペースの穴が空いた。



どういう訳かわからないまま、空いている穴を覗き込むと、暗くてよくは見えずおそらくずっと奥に続いているように見えた。



「さて行こうか!」



「はい?」



そう言って彼は円形の落とし穴のような空間の一歩手前までで立ち止まり、私に振り返って手を差し伸べてきたのだった。



「えっえっ!?」



そのまま私の手首を掴み引き寄せられて、穴の中に飛び込むかのように中へと入った。



「ちょっまっ…っ!!?」



(嘘でしょ!!?)



彼は私を抱きつかせた形で急降下の滑り台のように落ちていく。



〈ボフッ〉



あまりの急降下さに意識が失いそうになり朦朧となりかけた時、彼の足元からボフっと布団があったのか大きく飛び乗ったような音が聞えた。



「とうーちゃくー!」



「…何? その大胆な登場の仕方は…」



(到着?…って何?)



誰かの声が聞こえるけど、…ダメだ…意識が。



あまりの衝撃に意識が途絶えてしまい、プツンと切れるように暗闇の世界へと消えてしまったのだった。


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