扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「ああーやっぱり無理か」



(進めないなんて…)



「最初はそうだよね」



「えっ」



2人はまるで最初から分かっていたかのように声を出した。



「うーん、アリスちゃん」



「!」



蒼兎くんが突然 手を掴み握ってくる。



いきなりだったのでびっくりしてビクっと反応する。



「えっとえっと…」



「行こう」



「あ、あの…っ」



手を繋いだまま扉の中へと入ろうとするが。



やはり入れなかった。



「うーん…」



「僕の時は手を繋いだら入れたよね?」



「そうだよな」



「すっげー嫌だったけど♪」



「そりゃお互い様だ」



音仲くんの言い方は嫌そうには聞こえないのはなぜだろう。



そもそも進めない事自体おかしな事では?



(あ、まさかこういう壁では?)



それなら納得…でも2人の反応からしては違う。



「多分、この子は絶対にアリスなのは間違いないんだけど、ただアリスとしての感情が弱いから入れないんだよな」



アリスとしての感情が弱い?



それはどういう意味なのだろう。



そもそも私はアリスではないのだけど。



「アリスちゃんはアリスが好きなはずなのに、阻む感情があるのだろうな。…うーん」



(阻む?…)



よく分からないけど、私を拒む理由があるんだろう。



確かに私はアリスが好きでそれは昔からで。



でも、私の好きなアリスの物語は別のものだ。



でも、そのアリスを否定されるから嫌になる。



だから、その想いを閉じ込めた。



きっとそんな感情があるから、拒んでいるとかなのだろうか。



「よし、アリスちゃん」



「えっ」



「もし、初めてだったらごめんね」



「?」



そう言って蒼兎くんは私の頬に手を触れる。



「ま、待って…な、何?」



よく分からない状況にあたふたしていると、蒼兎くんの顔がゆっくりと降りてきて至近距離へと近付く。



「っ!?」



(今、何したの…?)



口の中に入る微かな吐息と蒼兎くんから香る微かな甘い匂い、そして唇から微かに動く柔らかい感触に、何が起きているのか分からずそのまま硬直してしまっていた。



「ねえ、それ無理やりって言うんじゃないの?」



「ん? 大丈夫だよ。
あ、入れた。ねっ上手く行ったじゃん」



「そうだけどさーていうか呆然となってるよ」



そして、何が何だか分からない内に扉に入れたようだった。


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