扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「⋯⋯⋯」



朝、小鳥のさえずりとアラーム音に重たい瞼を開けた。



「はあ、学校行きたくないな」



毎朝、目が覚めるといつもそんな事ばかり考えている。



それでも、学校に行かないと友達や家族に心配されるので、仕方なく重たい体をのそのそと動かす。



「私…悪い事なんてしてないのにな」



制服の袖に手を通し、軽く学校の準備をして部屋を出ようと、ふと本棚に置いてあるアリスの絵本に目を向けた。



「…アリス」



ふと口にした言葉。



それは、幼い頃に閉じてしまった憧れの想い。



でも、今の現状からすれば、物語の世界に逃げれたらどんなに楽だろうかとも考えてしまう。



朝、お母さんに挨拶をして簡単に朝食を済ませて家を出ると、まるで世界を遮断するかのようにイヤホンで耳を封じ込めて、物語や音楽の世界へと入る。



自分の世界に入り浸るのは楽しい。



嫌な事も辛い事も忘れられるから。



このまま全てを忘れられたらどれだけ嬉しいか。



人の声も物音も何もかもが無音のように感じ取れる。



まるで自分の世界に入り込んでしまったかのように。



物語や音楽の世界は私にとって純粋に心を忘れられる。



どうして現実はいつも嫌な思いばかり味わされるのだろう。



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