扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「やっぱり星都先生も関わりのある人なんですね」



「うん、そうだね」



星都先生が言うには、星都先生はあの世界には入る事はできなくて、属性というものがなく、でも関わりのある人間である事は間違いないので、いわゆる補佐役割をしているらしい。



「ほっしーはね、優秀なんだよな」



「変なあだ名で呼ばないでくれる?」



「えーなんでー可愛いじゃん、ほっしー」



「あのな〜仮にも年上の大人にしかも男が男に対して可愛いはないだろう」



「えー」



おそらく蒼兎くんからすれば冗談とかおふざけのつもりなのだろう。



「でも、呼び方かわいいよね」



音仲くんまでも便乗していた。



「君までもかよ、まったく」



「………」



見た事のない星都先生のいつも私に向けてくれる優しい表情とは違った困ったような呆れた表情。



すごく新鮮だと思った。



(困った表情の星都先生も素敵だ)



「アーリースーちゃん?」



「わっ」



新しい1面の星都先生にポケーっとしていたら、突然 目の前に蒼兎くんの顔が現れ顔を覗かせてきた。



「あ、蒼兎くん?」



「どうしたの?ぼーっとして」



「えっ全然?」



「ふーん?」



なぜか疑いの目で見られている気が。



「蒼兎くん、あんまり杏ちゃんいじめないであげてね」



「いじめてないし、むしろかわいがってる」



(私、かわいがられているの?)



「ならいいけど」



星都先生は私を心配してくれているんだ。



「蒼兎くん、出口っていつも保健室なの?」



「うん。まあ、色々あるけど…ここが1番近いし」



「そうなんだ」



「で、星都先生は僕らが帰ってくるのを待ってくれてるんだよ。見つかったら大変だしね」



音仲くんは付け加えるように教えてくれる。



「そうなんだ、へー」



(じゃあ、毎回あそこに行くと星都先生に会えるって事なんだ)



星都先生に会える。



先生に会える。



下校帰りに会える。



「望杏ちゃん?」



「!?」



音仲くんの呼びかけにはっと我に戻る。



またしもポーッとしてしまっていた。



「何?」



「そろそろ、帰ろうか?しまっちゃう」



「あ、ああ、そうだね」



「………」



どことなく蒼兎くんがまだ疑いの目を向けている気もした。


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