扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「琴坂先生、ありがとうございます。心配してくれて」



「ううん、辛い時はいつでも言ってね」



「はい」



なんとなくだけど、心が軽くなっている自分がいる。



きっとこれは、星都先生のお陰だ。



少しだけ駆け足で保健室へと向かった。




〈ガラ〉



「星都先生!」



「あ、いらっしゃい杏ちゃん。遅かったね」



「おじゃまします。星都先生あのね」



「うん?」



星都先生の優しさが込み上げるかのように胸がいっぱいになる。



「ありがとうございます」



「えっ」



私は元気よく感謝を込めた声で星都先生にお礼を言った。



星都先生は突然お礼を言うものだからびっくりするけど、琴坂先生の名前を出したらすぐに理解してくれた。



「琴坂先生に言ってくれたんですよね。
ありがとうございます、星都先生」



「…別に大した事はしてないよ。
僕はただ、君が心配なだけだから」



「でも、私は星都先生だけが心配してくれてたから、だから、本当に嬉しかったんです」



「そっか、よかったよ」



そう言うと、いつものように頭を優しく撫でてくれた。



「ぁ…」



(星都先生の手温かい)



「それで、今日はどうして遅くなったの? 掃除当番? にしては少し遅い気がするけど」



「あっえっと」



「言いたくないなら、別にいいけど」



星都先生はいつも心配してくれて、でも私はいつも言うのが嫌で隠してた。



「日直の子に琴坂先生から頼まれた資料作りを押し付けられたんです」



「そっか」



「………」



星都先生は私が嫌がらせされている事を知ってる。



でも私は、その事を一度も言った事はない。



だけど、星都先生は理解してくれている。



きっと星都先生は心が優しいそういう人なんだろう。



「杏ちゃん、無理してない? 前も言ったと思うけど、本気で辛くなったらちゃんと言ってね。僕は君が心配だよ」



「大丈夫ですよ」



「そっか、大丈夫ならいいけどね」



「星都先生、いつもありがとうございます。私は先生の存在がずっと励みになってます。学校は嫌だって思うけど、家族や友達に心配されるのが嫌だから毎日くるけど、でもどんなに嫌な事があっても保健室にくると星都先生が居るから私は毎日頑張って来れるんだと思います。だから、星都先生にはすごく感謝してます」



星都先生は私にとって憧れで尊敬できる人だけど、それ以上に保健室に行くのは星都先生に会いたいからでもある。



だって星都先生に会うと嬉しくて元気になるから、だから理由がなくても会いに行ってしまうのだと思う。


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