扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「君は本当にどうしようもない子だね。ありがとう、杏ちゃん。どんな理由であろうとも、僕が君にとって励みになっているなんて嬉しいよ。でもね、杏ちゃん。こんな事を言うのはあれだけど、僕はあくまでも保健の先生で大人の男性で、君は生徒で確かに他の生徒よりはひいきや特別扱いはしていると思うけど、でも杏ちゃんは未成年で生徒なんだよ。だからね、そういうこと言うのはよくないよ。男ってねものすごく単純でアホな生き物だから、かわいい女の子からそんな事言われちゃったら勘違いしちゃうからね」



「………」



きっと、星都先生は私の事を案じて言ってくれたのだと思う。



でも、私は先生の言葉に少しだけ切ない気持ちになってしまっている自分がいた。



「星都先生…私ね」



この時、私は否定された事を少しだけ悲しくなったという事もあったけど、それ以上に私は本気の思いで星都先生に言ったようなものだった。



分かっているんだけど、でも、嘘偽りのない気持ちだって分かってほしかったのかもしれない。



私はスカートをぎゅっと掴みぐっと力を込めて意を決意する。



バクバクと緊張する心押さえ込みながらも口を開ける。



「あ、あの…ね」



「ん?」



「私はー」



星都先生の真っ直ぐな瞳が私の瞳に向けてくれて、その視線を離すまいかと必死に見つめた。



「星都先生がっ」



だけど、ひとこと言う前に2人だけの空間に別の空気が入ってしまう。



「ほっしー」



軽い口調で保健室のドアを開けて現れたのは蒼兎くんだった。



「あーアリスちゃん♪ 来てたんだ! よかった。中々来ないから呼びに行こうと思ってて、ほっしーの所来てるかなーって思って、やっぱり来てたね」



「あ、うん」



「ちょうどよかったね、迎えに来てもらって」



「えっほっしー、一緒に行かないの?」



「僕はまだやる事あるからね。
先に行っておいて、後で行くから」



「はーい」



「?」



(星都先生も来るの?)



どこに連れて行かれるのかよくわからないけど。



「じゃあ、行こうか」



「うん」



保健室を出る際、ふと星都先生の方を見ると先生は「また後でね」と手を振ってくれた。



「………」



そんな何気ない先生の気遣いでも私は嬉しくなってしまっている自分がいた。


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