扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
蒼兎くんを怒らせる事をしてしまったんじゃないかと、考えていると白砂芽先輩が続けるように口を開いた。



「まあ、好きならそれはそれでいいけどさ」



「いや、よくないから」



(えっよくないの?)



私が星都先生のこと好きだったらよくないのかな?



いや、そもそも恋愛感情ではないんだけど、好きなのは確かだけど…のはずだけど。



そういえば、昨日も音仲くんが「星都先生はやめた方がいいよ」って言ってたけど、どういう意味で言ったのだろうか。



「まあ、確かにね。そもそも無理な事だもんね」



音仲くんはまた冷たい言い方で言い切ってきた。



「無理な事ていうか無理だから。そもそもありえないからね」



「まあ、無理もないと思うよ。本性知らないし、知らない女子からすれば好きになっちゃうだろうね。あの人、見た目いいし優しいから誰に対してもね」



乙近先輩は呆れ気味にも星都先生に対する正論を述べる。



「………」



だけど、そんな正論の言葉でさえも蒼兎くんは気に入らないのか、乙近先輩を睨んでいた。



「ちょっなんで睨むの?
俺はただ本当の事を言ったまでだよ?」



「まあ、瑠架の言いたい事は分かるけどね」



「あの、えっと…どういう…星都先生は良い人ですよ?」



私は本当に星都先生は良い人で優しい人でいつも私を気にかけてくれて、何より保健室に促してくれたのは誰でもなく星都先生だった。



そんな先生が悪い人だとは思えない。



「……」



「……っ」



(あれ…?)



何かおかしいことを言ったのだろうか、私の言葉に全員が難しい顔つきを向けられた。



「うーん、まあ無理もないもんね」



そう呟いた白砂芽先輩はそっと私の側に近寄ってきて、私の目を見据える。



「あ、あの…」


「ねえ、望杏?
もう1回聞くけど、星都のこと好きとかない?」



「えっ」



白砂芽先輩の真っ直ぐな視線に困惑しふと蒼兎くん達を見ると、同じように真っ直ぐな目で私に視線を向けていた。



「好きですけど…でも、別に私はそういうじゃあ…ただ、先生として好きでその…」



向けられた視線に困惑しながらも答えると、白砂芽先輩は「そう、自覚はないのね」とぽつりと呟く。



「じゃあ、そのまま保健の先生の星都として好きという自覚だけならまだいいのか、ねっ」



と白砂芽先輩はウインクしながら蒼兎くんに視線を向けるが、彼はまだ気に入らない様子のようだ。



「ていうか、時間の問題だろ、それ。つーか、さっきからまどろこっしいんだよ。はっきりと言えば?」



「せっかちね、もう」



「??」



更に困惑する私を余所に先輩はもう一度私に目を向けて、はっきりとした口調で発した。


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