扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「はあ…!」



(今、音仲くん私に気付いた?)



一瞬そんな気がしたけど、気のせい?



ゆらっと体を後退りして「ちょっとジュース買ってくる」と言い教室を出た。




「はあ」



なんかすごく1人になりたくて、蒼兎くん達を見ていると比較がありすぎてもう、居た堪れない気持ちでいっぱいいっぱいになる。



「あっ」



考えながら歩いていると、気が付くと校庭に出ていた。



「アリスちゃん」



と、私に気付いた蒼兎くんが嬉しそうにまさにウサギのよう近寄ってきた。



「!?」



そして、蒼兎くんは何の躊躇もなく私の両手首を軽く握る。



「あの…」



昨日の蒼兎くんと打って変わって握られた事にうろたえてしまう。



彼は何の気にすることなく続ける。



「ねえ、バスケ一緒にする?」



「えっあ、いや…あんまり得意じゃなくて」



「そっか、じゃあここで見てて」



「う、うん」



蒼兎くんはそのまま私から離れてコートへと戻っていった。



「ねえ、あの子誰だろうね」



「今、蒼兎くんと話してなかった?」



「!」



と、ギャラリーの女の子が蒼兎くんと話していた私についてこそこそと話し声が聞こえてきた。



「知らない子だね」



「うん、でもなんかかわいいよね」



「確かに。でもなんか蒼兎くん達のいるタイプとは変わった感じじゃない?」



「あーうん、大人しい感じね」



「なんか浮いてるね」



直感的な感想が聞こえてきた。



「………」



(浮いてる…)



ああ、やっぱり、私の思った通りだ。



浮いてるんだ、私は。



「……っ」



蒼兎くん達はなんかキラキラして楽しそうで、そんな中に私が入ったら違和感でしかない。



目の辺りにしたら、それはもうはっきりと現実に突きつけられるかのようだった。



(無理だよ、私は)



蒼兎くんと一緒にいるだけでも違和感なんだ。



気が付いたら私は足が後ずさりしして、そのまま校庭から姿を消していた。



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