扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
昔からそうだった。



いつもひと目を気にしていて、周りからどう思われているか気にして気になって、自信を持って前に出る事ができなかった。



自信がなくて、自信を持ってできなくて、だから言える事もできない、



「はあ、勝手にいなくなっちゃって怒ってるかな。
どうしよう、今日」



自分が嫌になるけど、でも居た堪れない気持ちにどうしようもないんだもの。



それから3日間、連絡をくれたけど用事があると嘘を付いて行かなかった。



そういえば、あれから蒼兎くんに会ってない。



「怒ってるかな、やっぱり」



(怒ってるよね、やっぱり)



「あ…」



そんなことを思いながら少し早めに学校に来て中庭に行くと、蒼兎くんが奥のベンチに座って本を読んでいた。



(タイミング悪…)



そういえば、あの時もこんな風にベンチに座ってた。



「…ぁ」



(やっぱりキレイだな)



男の人なのにすごくキレイでかっこよくて、まるでモデルさんみたいですごく絵になる。



「…っ」



なのに、どうして私なんかに気に掛けてくれるんだろう。



白砂芽先輩みたいな綺麗な人となら分かるんだけどな。



私は別に綺麗じゃないし、かわいい訳でもないし、浬樹ちゃん達はかわいいって言ってくれるけど、私はそうは思わなくて。



背も小さくてちんちくりんみたいな感じで、頭もそんな良くなくてそこそこだし、欠点しかないような私なのに、なんで。



「教室行こ…」



と、ここにいると自分を卑下しすぎて虚しくなってしまいそうになる。



ここから去ろうと踵を返そうとした時。



「あっ」



ふいに蒼兎くんが顔を上げ私に気付く。



「アリスちゃん!」



その声に思わず肩が竦む。



むくり立ち上がり本をベンチに置き、ズカズカと私に近寄ってくる。



「えっと…」



蒼兎くんは別に怒っているようには見ないけど、避けている私からすれば威圧感があった。



だから、つい逃げようとしていた。


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