扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「ちょっ」



「!?」



「なんで逃げるの?」



逃げようとする私に蒼兎くんはばっと駆け寄って、腕を強く握って阻止された。



「そ、その、えっと」



「なんで来てくれないの? 用事があるのも嘘だよね? この前だって勝手に居なくなっちゃったし。俺、なんかした?」



「…っ」



蒼兎くんは何も悪くなくて、これは私の気持ちの問題で。



「ごめんなさい、今日はちゃんと行くから」



「それも嘘だよね?」



「うっ」



嘘ではないけど、でも今日はちゃんと行こうと思ってるのは本当で。



「ねえ、何か困ってる事があるならちゃんと言って。
アリスちゃんが来れるようにするから。ねっ?」



「……っ」



(違う…違う!)



蒼兎くんは何も悪くない。



私が私が意気地なしで勇気が出ないだけで、蒼兎くん達の中に入る自信がないだけ。



でも、そんな事を言っても困らせるだけ。



「う、嘘じゃないよ? ちゃんと行くから」



声が震えてるのが嫌でも分かる。



「ごめんね、読書の邪魔して。じゃあね」



今度こそ蒼兎くんから逃げようと、走ろうとしたー。



「アリスちゃん!」



「っ!?」



それは突然の事だった。



あまりにも突然でいきなりで一瞬何が起きたのか分からなかった。



「っ」



(えっ…)



「はぁ」



蒼兎くんの吐息が私の口の中に流れる。



「っ…!?」



気が付くと近くにあったベンチの先っ歩あたりに座っていて、目の前には蒼兎くんの顔が広がっていた。



「なっななな」



と、次の瞬間、腕を引っ張られてそのまま背中に回され抱き寄せてきた。



「ちょっ!…あ、蒼兎くん!?…は、離してっ」



そう懇願し彼の体を押そうとするが、力強くて押せない。



「じゃあ、理由教えてくれる?じゃないと離してあげない♪」



「今、何したの?」



「何って脅しだよ」



この時思ったのは、「やっぱり男の人ってみんな同じように酷い事するんだ」だった。



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